中央集権の限界
DAOが注目される背景には、長年当たり前とされてきた中央集権型組織の構造的な限界がある。これは一部の企業や経営者の問題ではなく、仕組みそのものが抱える限界である。
プラットフォーム企業による価値の独占
現代のインターネットは、巨大プラットフォーム企業によって支えられている。ユーザーやクリエイター、開発者は価値を生み出しているにもかかわらず、その多くはプラットフォーム運営企業に集約される。ルールの変更、手数料の引き上げ、アカウント停止といった重要な決定は、基本的に一方的に行われ、参加者側が意思決定に関与する余地はほとんどない。
ガバナンス不透明性
中央集権型組織では、意思決定のプロセスや資金の使途が外部から見えにくい。どのような議論を経て決定されたのか、なぜその判断に至ったのかが共有されないまま、「決定事項」として降りてくるケースも多い。この不透明性は、組織への不信感や内部対立を生みやすく、スケールすればするほど深刻な問題となる。
国境を超える協業の摩擦
インターネットは国境を越えて人をつなげたが、組織の仕組みは依然として国単位に縛られている。法制度、通貨、契約、税務といった違いが、グローバルな協業を難しくしてきた。結果として、能力や貢献度ではなく「どの国に属しているか」が障壁となる場面も少なくない。
これらの問題に共通するのは、権限・情報・価値が中央に集中しすぎていることである。DAOはこの集中構造そのものを見直し、より透明で参加型の組織運営を実現するための試みとして生まれた。